信託は、非常に自由度の高い制度であり、内容を自由に定めることができます。
前の例で、祖父は、1億円を不動産に投資し、その賃料を孫娘の養育費に充てようとしました。
しかし、不動産投資に限るものではありません。
不動産が危険だと思えば、預金しておくことも可能です。
たとえば、お金のまま管理して、毎月一定金額を孫娘を養育する者に交付することとし、孫娘が成人したときに残っていたお金と利息は、全てその時点で孫娘に交付する、という方法でも結構ですし(信託のイメージ2)、ずっと保管したままにしておき、成人した時点で全額を孫娘に交付する、という方法もとれます。

また、契約終了原因も自由で、孫娘が成人した時点で配当して終了する、と定めても結構ですし、孫娘が30歳になるまで存続する、という方法もとれます。
不動産投資の場合には、不動産が売却できた時点で終了させることもできます。
受託者は、信託銀行などの法人でもなれますし、個人でもなれます。また、普通に事業をしている株式会社などがなることもできます。
もし、孫娘が成人した後も信託が継続するようであれば、孫娘は、信託の受益権を第三者に売却し、お金に換えることもできます。
信託では、受託者は、契約に従って信託財産を管理・処分する義務を負担します。多くの場合には、報酬をもらって行うのが通常です。
しかし、受託者が信託事務を処理するときは、受益者のための行為であるにもかかわらず、自分の名前で契約をしたりしなければなりません。
たとえば、1億円を元手に不動産投資をするときは、不動産を購入しなければなりません。
この場合は、受託者が自分が契約者になり、契約上の義務を負担することになります。
その不動産を第三者に賃貸する場合も自分が賃貸人になり、賃貸人の義務を負担しなければなりません。
そこで、その義務の負担を嫌がって、誰も受託者になってくれない、というケースも想定されます。
そのため、信託法では、「限定責任信託」という制度を設けています。
限定責任信託とは、受託者が、全ての「信託財産責任負担債務」(受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務)について信託財産のみをもって責任を負担する債務のことです。
つまり、信託事務を処理する過程で、過大な債務を負担した場合であっても、受託者は、信託財産だけを支払えば免責される、つまり自分自身の財産で支払わなくてよい、という制度です。
ただし、債権者は、どの契約が限定責任信託で行われるかわからないと、受託者自身の財産をあてにして契約したにもかかわらず、信託財産でしか支払われないことになってしまい、損害を被ってしまうおそれがあるので、限定責任信託を設定した場合には、登記をして、公に公示することとされています。


