では、事業信託は、事業再生の場面では、どのように活用できるのでしょうか。
事業再生が問題となる場面は、通常の支払期限での支払が困難になったり、債務超過に陥ってしまった場面です。
この場合、債権者は、債務者の財産を目当てに債権回収をはかってきます。
債務者に破産されてしまうと、その時点での債務者の全財産をお金にかえて、法律の優先順位に従って債権者に平等に配当がなされることになります。
そして、最終的には、回収不能となってしまった債権を償却処理します。
そこで、債権者としては、債務者が破産するよりも、多額の債権回収がなされるのであれば、その方法にメリットを感じ、同意してくれる可能性がでてきます。
そこに、事業信託活用の余地がでてきます。
通常、債務超過に陥ってしまった企業がより多額の配当を債権者にしようとする場面では、民事再生を申し立てた上で、事業を第三者などに譲渡し、その譲渡代金を債権者に配当するなどの処理を行います。その方が事業譲渡の代金分だけ破産処理よりも債権者に対する配当が多くなるからです。
しかし、その場合、事業譲渡は、その時点での事業を見積もることになりますので、事業を譲り受ける方は、将来リスクなどを考え、なるべく低額で譲り受けようとします。
そのため、事業の譲渡代金も低額になる傾向にあります。
そこで、事業譲渡のかわりに、事業信託を活用して事業再生を行うスキームを考えてみましょう。
(スキーム1)
債務超過に陥ったX社は、自らの事業を、Y社に事業信託します。Y社への信託により受益権が発生し、これをX社が取得します。
X社は、受益権を売却して債権者に配当します。この受益権の内容は、今後Y社が事業を行うので、そこから得られる収益と、信託期間が終了した際に事業を第三者に譲渡し、あるいはY社が買い取ることになるので、その譲渡代金となります。
この将来の見通しにより、受益権の価格が決定されます。
これを図にすると、次のようになります。
事業再生における事業信託(受益権を売却して売却代金を配当)

(スキーム2)
債務超過に陥ったX社は、自らの事業を、Y社に事業信託します。信託により発生した受益権を債権者に配当します。
以後Y社が事業を行った収益は、債権者に配当されます。
さらに、信託期間が終了した場合には、Y社が事業を買い取るか、あるいは第三者に売却することになり、その事業譲渡代金も債権者に配当されます。
Y社が事業に成功すれば、最後の事業譲渡代金は高額になる可能性があります。
事業再生における事業信託(債権者が受益権を取得)



