では、どのような場合に詐害信託となり、信託の設定を取り消されてしまうのかを説明します。図に書いて説明します。
右の図で、まず大前提になるのは、次の要件です。
(1)委託者(債務者)が、「債権者を害することを知って信託を設定したこと」。
「債権者を害する」というのは、その財産が流出することによって、債権者に弁済ができなくなることを言います。
したがって、その財産が流出しても、他に十分財産があって、その時点での債務全額を弁済できるような場合には、「債権者を害する」ことにはなりません。
債務超過に陥った会社が、自らの事業の全てを第三者に信託し、その結果、債務の弁済ができなくなるような場合には、「債権者を害する」ことになります。この「債権者を害する」ことを「詐害性」の要件と言います。
ところで、詐害信託になるためには、詐害性の要件だけでは不十分です。
なぜなら、委託者が詐害の意思を持っていたとしても、何も知らずに受益権を取得した者が、その信託を取り消され、受益権がなくなってしまうとすると、受益者の地位を不当に害することになるからです。
たとえば、X社が、不採算事業をY社に事業信託し、その配当受益権を第三者に譲渡して譲渡代金を債権者に分配していた場合、事情を知らずに受益権を譲り受けた第三者にいるのに、この受益権売買が詐害信託として取り消されたりすると、誰も受益権を買ってくれなくなってしまいます。
そこで、信託法では、善意の受益者を保護するために、詐害信託が成立するためには、次の要件が必要と定めています。


