事業譲渡によって、譲渡会社及び譲受会社共に経営状況が大きく変わることになります。
そのため、会社法は、事業譲渡によって、株主に予期せぬ損害を与えないように株主の保護を図るべく様々な手続を定めています。
そこで、まず、会社法に定める手続が適用される事業譲渡の内容が問題となりますが、ここで、事業とは旧商法24条以下にいう「営業の譲渡と同一意義であって、営業そのものの全部または重要な一部を譲渡すること換言すれば、一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要なる一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によつて営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ」譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に旧商法25条に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいうとされています(最判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁)。
したがって、上記基準にあてはまる場合には、事業譲渡のため会社法上の手続が必要となってきます。
他方、会社が不動産といった所有財産を、事業そのものとは切り離して個別に譲渡する場合には、譲渡会社が不動産会社等でなければ「一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産」を譲渡することにはあたりませんので、事業譲渡とはなりません。
なお、前述のように事業譲渡では、分割と異なり債権者保護の手続は会社法上規定されておりませんが、これは後述のように、事業譲渡の場合には、原則として譲渡会社は事業譲渡後も依然としてその債務について責任を負うため、分割よりも債権者保護の要請が弱いからです。
もっとも、債権者保護手続きがないからといって、事業譲渡によって会社が何も責任を負うことがないというわけではありません。
債権者を害するような事業譲渡がなされた場合には後述のように、詐害行為取消、損害賠償責任を追及されるおそれがありますので、気をつける必要があります。
以下では、事業譲渡の具体的な手続について、説明したいと思います。


