民事再生と会社更生

再建型の手続として、民事再生と会社更生があることは既に説明しました。

民事再生とは、「経済的に窮地にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の許可を得た再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済的生活の再生を図ること」を目的とする手続とされています(民事再生法1条)。

これに対して、会社更生とは、「窮地にある株式会社について、更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により、債権者、株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し、もって当該株式会社の維持更生を図ること」を目的とする手続とされています(会社更生法1条)。

どちらも難しい言葉で書かれていますが、経営状態が悪くなってしまった債務者である会社について、その会社の立て直しをするために債権債務の調整をして、その調整された借金について返済していく計画を立て、その計画を実行することによってその会社の建て直しをするという、まさに「再建型」の手続であることは共通です。

民事再生と会社更生の違い

では、両者の違いはどのようなところにあるでしょうか。

まず、民事再生は開始決定がされた後も原則として債務者がその会社の経営にあたることができ、業務の遂行権、財産を管理し処分する権利を失いません。

また、法律上その再生のための計画案(再生計画案と言います。)を提出しなくてはならない期間の制限が短いことからその手続がスピーディであり、再生計画案が可決されるための要件も比較的緩和されたものとなっています。

これに対して、会社更生では、その開始決定がされた後、更生管財人が選任され、この更生管財人が更生しようとする会社の経営にあたります。

そのため、更生管財人に会社外部の者が選ばれた場合には、更生開始後はそれまでの経営陣はその経営権を失うことになります。

また、外部の者が更生しようとする会社についてその財産や債務を調査することになるため、どうしても時間がかかってしまいます。

もっとも、民事再生では、抵当権などの担保権がついている債権については、債権者はその再生計画によらずに行使することが出来るのに対し、会社更生では、更生が開始された後は抵当権などの担保権がついた債権も、その更生計画の中で弁済されなければならず、債権者が勝手に行使することはできません。

このため会社更生は民事再生よりも強力な再建型の手続とされ、更生するための計画案が債権者等に認められるための要件も民事再生よりも厳しいものとなっており、権利関係が複雑だったり、債権者の数が多かったりするなど大規模な企業のための手続とされていました。