債権者について

目次

事業再生を行う際には、債権者の存在を無視して語ることはできません。

債権者としては、公租公課、労働債権、金融債権、商取引にかかる売掛債権などの分類することができます。

公租公課

公租公課は税金や社会保険料です。

これらが滞納した場合には、税務署などは、民事と異なって、裁判を起こすことなく預金や売掛金の滞納処分(差押)をすることができます。

したがって、事業再生を行う際には、公租公課の支払の手当はしっかりとしておかなければなりません。

労働債権

労働債権は、労働者の給与・賞与・退職金などです。

破産手続でも優先債権とされている重要な債権です。

労働者は、給与によって日々の生活設計をしているのが通常であり、給与が支払われないとなると、すぐに会社に混乱が生じてしまいます。

何より、労働意欲がなくなり従業員が離散してしまう結果となりますので、事業再生どころではなくなります。

したがって、労働債権の支払の手当もしっかりとしておく必要があります。

金融債権

金融債権は、銀行、ノンバンク、リース会社、債権回収会社などです。

このうち、債権回収会社(通称「サービサー」)というのは、1998年に制定された「債権管理回収業に関する特別措置法」によって、法務大臣の許可を得て設立される株式会社であり、銀行などからの委託を受けて貸金債権の管理回収をしたり、銀行などから貸金債権などを譲り受けて、自分が債権者として債権回収をしたりする専門の債権回収業者です。

これら金融債権者は経済合理性に基づいて行動しますので、債権者から見て合理的な事業再生計画を立てること、債権者側が債権を償却しやすくすること、がポイントとなります。

なお、リース会社については、事業継続に必要不可欠なリース物件については滞納によりリース物件が引き上げられてしまうと事業継続に支障を来しますので、手当をしておかなければなりません。

取引先の債権

取引先の債権については、今後その取引先の取引を継続するかどうかで対応が異なってきます。

場合によっては一律公平な処理ではなく、今後の取引上の条件を含め、具体的事情に応じて話し合いをしてゆく必要があります。

アドバイザー

事業再生の過程で登場するアドバイザーとしては、M&Aアドバイザー、事業再生コンサルタント、資金調達アドバイザーなどです。また、士業である弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、不動産鑑定士などもアドバイザーに入ります。

事業再生の段階で、事業を売却したいと思っても、すぐに事業の買い手が見つかるわけではありません。

また、事業の価格をいくらにするかも問題です。事業再生では、手続を公正にしなければなりませんので、買い手を複数つのり、ビッド(入札)によって事業を売却することもあります。そのような一連の手続を債務者本人が行うことは極めて困難です。そのためにM&Aアドバイザーが必要となってくるのです。

大型案件では、証券会社や投資銀行がM&Aアドバイザーの役割を担いますが、中小企業では、中小企業のM&A業務を扱うアドバイザーがこの役割を担います。

事業再生コンサルタント

事業再生コンサルタントは、債務超過に陥った企業が、なぜ債務超過に陥ったのか、についての原因を探り、その原因を除去して事業を再生するための事業再生計画を策定するのに助言をする役割を担います。

また、事業再生の際に必要となる弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、不動産鑑定士、M&Aアドバイザーなどの全体の調整役を担うこともあります。

資金調達アドバイザー

資金調達アドバイザーは、事業再生の過程で資金調達が必要となった場合の資金調達方法について助言をする役割を担います。
場合によっては融資をしてくれる金融機関、ファンド、投資家などを紹介する役割も担います。

弁護士

弁護士は、事業再生のリーガル面の全てをチェックし、助言を行います。

事業再生は、全額の債権回収が困難となる債権者と鋭く利害が対立し、法的な問題は噴出します。
したがって、必ず弁護士に依頼することが必要となります。

公認会計士、税理士

公認会計士、税理士については、事業再生の計画策定、M&Aの事業価値算定、会社分割の際の資産負債の算定など財務面で助言を行います。
必ず依頼することが必要です。

司法書士

司法書士は、商業登記や不動産登記が必要となった場合に依頼します。

不動産鑑定士

不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価が必要となった際に依頼します。

このように、事業再生においては、多数のアドバイザーの力を借りながら再生を遂行してゆくことになります。
信頼できるアドバイザーを見つけられるかどうが、事業を再生できるかどうかをわけるカギとなるでしょう。

事業再生ファンド

ファンドというのは、「基金」のことです。投資家が資金を出してファンドを設立し、そのファンドが窮境に陥った企業に資金を出して、再生させ、企業価値を上げてから上場させた上で株式を売却し、または上場させずに事業を売却して投資資金を回収したりして収益を上げます。
ただし、リーマン・ショック以降、ファンドの数が激減し、以前のように事業再生に資金を投入してくれるファンドを見つけることは困難となりました。