労働契約承継法の規律

会社分割で事業が承継される場合、従業員はどうなってしまうのでしょうか。

分割会社にとどまるのでしょうか、それとも当然に設立会社または承継会社に移転するのでしょうか。

会社分割に伴う労働契約の承継については、「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(労働契約承継法)が定められており、承継される事業に「主として」従事する労働者と、承継される事業に「従として」従事する労働者で異なる扱いがとられています。

具体的には、承継される事業部門に主として従事する労働者は、

(1)分割計画書・分割契約書によって、設立会社・承継会社へ承継されるとされている場合は異議を述べることができず、当然に雇用関係が設立会社・承継会社へ承継されることになります。

(2)分割計画書・分割契約書によって設立会社・分割会社に残されるとされていた場合は、異議を述べることにより、設立会社・承継会社への雇用関係の承継を実現することができます。

他方、承継される営業部門に従として従事する労働者は、

(1)分割計画書・分割契約書によって、分割会社に残されるとされていた場合は異議を述べることができず、当然に分割会社との間で雇用関係が継続することになります。

(2)分割計画書・分割契約書によって、設立会社・承継会社へ承継されるとされていた場合は、異議を述べることによって、分割会社との雇用関係の継続を実現することができます。

この点を表にまとめると以下のとおりとなります。

労働者に対し、どのように対応すればよいのか

会社は、会社分割を行うに際し、労働者との関係で、次の事項を守ることが必要となります。

(1) 労働組合(または労働者代表)との事前協議
(2) 労働者との個別協議
(3) 労働者への書面による通知

各事項の詳細については、下記に記載のとおりです。
各手続は労働者保護の観点から設けられている重要な手続ですので、労働者を無視して会社分割を行うことがないよう注意するようにして下さい。

労働組合・労働者代表との事前協議とは?

分割会社は、会社分割に際し、労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数の代表者)と協議を行う必要があります。これは、事前に会社分割に関する説明を行うことで、会社分割に対する労働者全体の理解を得ることを目的とした手続です。

この事前協議は、(2)の個別協議に先行してなされる必要があります。

労働者との個別協議とは?

次に、分割会社は、会社分割に関係する全ての労働者との間で、個別に協議をする必要があります。
これは、労働者に対して、会社分割に関する事項の説明を行い、労働者の意見を聴取するために行う手続です。

具体的には、労働者に対し、分割後に当該労働者が勤務することとなる会社の概要、労働契約承継法に規定される承継事業に主として従事する労働者に該当するか否かの考え方等を十分に説明し、本人の希望を聴取したうえで、当該労働者にかかる労働契約の承継の有無、承継するとした場合または承継しないとした場合の当該労働者が従事することを予定する業務の内容、就業場所その他の就業形態等について協議することになります。

なお、労働者との個別協議は、(3)の労働者への通知をすべき日までに行うことが必要とされています。

労働者への通知とは?

最後に、分割会社は、労働者の処遇がどのように分割計画書・分割契約書に記載されたかを労働者に書面により通知しなければなりません。

これは、労働者に一定期間内(通常は株主総会の前日まで)に異議を述べるかどうかを判断する情報を与えるために求められる手続です。